今回は、名古屋大学法学部の2023年の小論文の解説と解答例です!
2023年度は、前田健太郎「女性のいない民主主義」(岩波新書、2019年)からの出題でした。
◆出題内容
問題数は3題で、第一問と第二問が内容理解を問うもので、第三問が自分の意見を書くものでした。
第三問が自分の意見を書く、と言っても課題文で話されているテーマと全然違うことを書いてはいけません。課題文の問題意識を踏まえた上での記述が求められている(問題文の「問題文で示された「民主主義」や「代表」についての考え方と関連付けながら、とあることから明らかです)ので、課題文を正確に理解することがまずは大事となります。
◆解説
解答例については、河合塾が出しているものがあるので、それを参考にしてもいいでしょう。
問1と問2はだいたい同じようなものになってしまうのは仕方ないですね。
◆問1
問1では、「普通選挙の位置づけ」が聞かれています。これを書かないと得点はもらえないでしょう。
位置づけはどのように違うのでしょう?
シュンペーターの場合は、普通選挙は民主主義の要素ではありません。
一方、ダールの場合は、普通選挙は民主主義の要素となります。
さらに、それぞれの理由も書きましょう。
シュンペーターの民主主義の定義の場合は、政権交代可能性が重視されているからです。本文には書かれていませんが、政権交代ができれば、ずっと一定の集団が権力を独占することなく、そのときの多数派の意見を反映する政権が成立するはずだと考えていると思われます。
この場合、そもそも選挙権を有する主権者が偏っているとしたら民意を正確に反映した政権が成立しないのでは?という反論も考えられそうですが、そのあたりは問3で書きましょう。
次に、ダールのポリアーキーですが、本文の内容だけでは、その中身は分かりづらいですね。このようなことはよく起こります。
わからないけど、わかる範囲で間違いないように記述していくことが大切です。自分の想像で付け足してしまうと、減点されてしまいます。
解答例では、「包括化」と「自由化」について書くに止めました。
なんとなく、シュンペーターの民主主義の定義よりは、本当の民主主義に近い考え方だけど、結局女性を含ませることはできず、欠陥が明らかであるような印象ですが、やはりそのような指摘が筆者からされています。
◆問2
次に、問2です。
問題文では、実質的代表と描写的代表の意味の違いが聞かれているので、そこを外さないようにしましょう!
問題冊子のpp.8,9あたりから抜き出してまとめるといいでしょう。誰が書いてもそれほど答案に違いは出ないかと思います。
また、文末は「・・・という違いが出る。」という書き方がいいでしょう。
◆問3
問3です!
ここでは、「各政党は国会議員の選挙において候補者の半数を女性とすることを義務付ける」という考え方を提示して、それにたいする賛否を示した上で、「民主主義」と「代表」についても関連付けながら述べよとあるので、これらの条件に気を付けながら文章構成をしていきましょう。
本文では、民主主義関連では、シュンペーターの定義とダールのポリアーキーが紹介されています。これらを見ると、民主主義の定義にはそもそも「代表」という観念が含まれていないことがわかります。だからこそ、代議制民主主義という言葉が登場するのです。
「民主主義に代表という考え方が含まれていない」という文章に、違和感を感じる人も多いかと思いますが、直接民主主義と間接民主主義という言葉を思い出すと、その違和感も取れるかもしれません。
直接民主制の場合は、主権者全員がある議題について議決権を有する制度ですね。そこに代表が入る余地はありません。このように、民主主義から即代表制が導かれるわけではないのです。ですから、シュンペーターやダールの考え方自体はありうるものです。筆者は現代の民主主義への一般的な印象(多くの国では代議・代表制民主主義だから)とは異なるものを提示してきているので、注意して読まないと誤読をしてしまうことになりますので、気を付けよう。
とはいえ、わざわざ本文で「民主主義」と「代表」を分けて論じたのは意味があるはずで、解答を書く場合も、それぞれを別々に論じた方がいいかと思います。
民主主義制度は、民意をどれだけ正確に政治に反映させるべきかというところがポイントになってきます。
一方で、代表はある意味、民主主義の一形態ともなりうるもの(代議制民主主義等)で、代表を通じて民意を反映した政治をすることができるかという部分がポイントになってきます(だいぶ簡単な説明ですが、今回はこのくらいで・・・。代表制とと民主主義の関係について興味のある人は調べてみるといいでしょう。受験対策にもなると思います。)。
民主主義制度については、様々な国でいろいろと考えて作られていますが、ほとんどの国では女性議員の割合が男性議員に比べて低くなっているのが現状です。
いくら議論を尽くして精緻な理屈のもとに制度がつくられても、結果として女性の声を届ける女性議員の数が少なければ、欠陥制度と言われても仕方ないでしょう。もちろん、女性議員が必ずしも女性の利益のみを考えて発言行動するとは限りませんが、男性よりは女性議員は女性のことを考えて発言行動したり、女性の利益に資する行動を取る可能性が高いことは確かでしょう。
「賛成」で書く場合は、ちょっと乱暴ですが、結果が出ていない以上は、システムを変更すべきだ!という流れでもいいでしょう。
また、「反対」の場合は、本文で書かれている「描写的代表」の効果がはっきりわからず、理論的でないという理由で反対する流れがいいのではないでしょうか?逆差別の可能性もあります。
もちろん、他にもたくさんの書き方の流れがあると思います。
上に提示したものは、参考にしてみてください!
ちなみに、女性議員が過半数なのは世界で3国のみのようです。
ルワンダ、キューバ、ニカラグアです。
日本は15.5%で150位でした。
◆解答例
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どうでしたか?
自分でも書けそうでしょうか?
小論文は添削が大事です!
また、勉強方法もあります。
単に過去問をやるだけでは、評価される文章にはなりにくいのです。
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